第3章  大地の四季の流れに沿う子ども達

第3章  大地の四季の流れに沿う子ども達

さあ、あなたは、理想の幼稚園を描くことができましたか。

人生80年といわれるなかでの、最初の7年間、この特別な幼児期、子供時代、人生の基礎を作るといわれる幼児期、三つ子の魂百までも(決して、三つ子の知識百までもではありません )と言われる時期、この時期の心のあり方は、35歳から42歳 までの心のあり方に反映されるとも言われています。(だから、我々は、将来の親を育てているのですね )

この大事な時期にどんな教育環境を与えるかは、大学の4年間よりも、かなりの重要課題です。

その意味で、大学4年間より幼稚園3年間は人間の成長過程の中で、親は真剣に向き合うことが必要です。なぜならば、脳をはじめ、精神、身体、組織、細胞など、物質的、精神的な一生を決める人間たるものをこの時期に作るのですから。

ここ数十年で、子供を取り巻く自然社会環境は、大変変わっています。悪い方に進んでいることは実感されていると思います。それだけに、我々大人は、子供の本性にあった自然社会環境を作って行かねばなりません。

こんな流れの中で、我々大地のこの22年の試みをご紹介します。

大地は、果樹園、雑木林、田園などの自然の息づかいを感じながら、暮らせる場所です。

  • 春;薄ピンク色のリンゴの花と黄色いタンポポと共に春風が訪れ、子供達の芽吹きが始まります。
  • 夏;緑一色の森、草の匂いに包まれながら、子供達の汗と歓声が大地の丘にあふれます。
  • 秋;自然の恵みが、味覚・匂い・そして美しさを深く漂わせ、子供達の心を紅葉と共に 秋色に染めてくれます。
  • 冬;真綿に包まれた静寂な丘に、薪ストーブの煙が上がり、子供達の声が響き、真っ白なキャンパスにその姿が描かれます。

大地の周囲をぶらりと散策

車を降りると、リンゴ畑の中に細い農道が続きます。道の真ん中には、30年前の日本のどこにもあったようなオオバコが繁っています。晴れても、降っても、毎日、子供達は、長靴でこの道を踏みしめて、大地へ向かいます。

リンゴのトンネルは、春は、美しい花で、夏は、かわいい実で、秋は、赤い姿と良い香りで、冬は綿帽子でむかえてくれます。

このトンネルを抜けると、緑色の屋根が続く建物群が見えてきます。初めて訪れる人は、ここを幼稚園だとは思いません。最初に、真新しい2階建ての建物が見えてきます。玄関をよく見ると、昔の土蔵の蔵度が目に入ります。ここは、5000冊以上の絵本や児童書があるののはな文庫です。セミナーハウスやゲストルームも兼ねており、ここからの志賀高原の眺めは最高です。そのまま進むと、右側に小さなログハウスがあり、ここは、昨年から始まった大地アカデミー(小学校)の教室です。そして、左側には、東屋があります。ここは、雨や雪の時でも、お弁当を食べたり、工作をしたりできる場所です。さらに進むと、右側に、雪隠(せっちん) 着替え処 五右衛門風呂 と書かれた木札が架けられた建物が見えます。ここは、外のトイレそして、子どもたちや大人にも大人気の2つ五右衛門風呂です。しかも露天風呂です。そして黒い斜面にマンホールのようなものがあります。

ここまで来ても、あなたは、たぶん、幼稚園だとは、まだ確信がもてないでしょう。
木製のピクニックテーブルが続き、斜面にウサギ小屋があります。その横に、大きな羽釜のある竈、古い鍋釜のある炊事場、そして2口のおくど(かまど)、鉄の扉の石釜、更にたこ焼きたい焼き機などが並びます。

眼前には、菅平、志賀高原の山々が並び、緑一面、全く人工物は目にすることはありません。もちろん、自動車の音もなく、鳥、虫、蛙、木立のざわめき、風の音しか聞こえません。

幼稚園の建物は、樹木に囲まれて全容は見渡すことは出来ません。玄関を左手に更に進むと、砂場があり、そこに、可愛いままごと道具があり、初めて、ここが幼稚園であることを感じていただけるでしょう。

それ以外、ジャングルジム、滑り台、ブランコと言った幼稚園の定番遊具は見あたりません。その前庭(と言うより、林の続き)を通り過ぎると、素敵なツリーハウスが見えてきます。木立の広場がありクニックテーブルがたくさん並びます。この木漏れ日と日だまりの中でだれもがゆっくりのんびりしたいと思うでしょう。
ここで、横の林の中に目をやると、通称アミアミと呼ばれるアスレチックネットが、森中に張り巡らされています。さらに驚くことに、高い木の枝や棒から、ブランコやロープがぶら下がっています。これらは、とても幼児が遊ぶには、とてつもなく凄すぎて、大人であるあなたさえ、躊躇することでしょう。 せいぜい、アスレチックロープのネットで、寝ころぶ位が無難であると考えます。

ここにはいると、夏でも鳥肌が立つぐらいの涼しさです。カラ松やナラやブナなどに囲まれ、小鳥の鳴き声が止みません。ここから下には、畑や水田に続く急斜面が続きます。この斜面は、ほとんどの子供は、尻餅を付いて降りていくぐらいの坂です。冬の雪を想像してみてください。

大地園舎内を見学

ようやく、ここは、子供達の世界であることを確信出来ました。それでは、建物内にご案内いたしましょう。でも、1つ引っかかることがあるはずです。何か足りないものがある、必ず、幼稚園や学校にあるもの。あなたは、きっとそれに気づいているはずです。・・・・・・・何でしょう。

そう、グランドです。園庭です。子供達が遊ぶグランド(園庭)がありません。運動会はどこで、子供達はどこで遊ぶの、と質問がでてきます。そのかわりに、大地の前には、通称スロープと呼ばれる幅30メートル、全長100メートルあるスキーゲレンデのような芝生の斜面があります。私たちは、いつも、この質問を受けると、ここで運動会をやりますと答えて、質問者の反応を楽しみます。誰もが、まさかという顔をします。そして、この答えを用意してあげると、誰もが、あははは・・・ と笑ってくれて、それはおもしろいと手を打ってくれます。その答えは・・・・・・

綱引きをするとしましょう。子供達は、スロープ下方へ引っ張り、大人は上方へ引っ張ること。大玉転がしは、いつも、玉が先に行ってしまい、子供達は必死に追いかけ、時々一緒に回ってしまったり。登るときは、いよいよ真髄です。

かけっこもこの坂を転がりながらも駆け下り、必死に駆け上ります。借り物競走もありますよ。昨年の借りて(見つけて)くるもの。カナヘビ1匹・トンボ・アケビ・蜘蛛・ドングリ・松ぼっくり・動物の落とし物など。子供達は、どこにどんなものがあるかよく知っています。こんな運動会だから、当日の朝まで何をするか知らないし、練習もなく、その存在すら知らない子もいます。でも、毎年、親子ものすごい盛り上がりです。人に見せる、そのための練習はないのです。

それは、子供は毎日が本番であり、リハーサルのない人生を送るのが幼児時代なのです。そして、ここに入れているご両親も、立派にみせるための練習を全く望んでおりませんし、期待もしていません。

子供は子供自身の成長のために時間を使うべきであって、周囲の大人に見せるためにその大切な時間を使うものではない言うことを知っているからです。

話しは横道にそれましたが、玄関をくぐってください。中にはいると、ひんやりとして薄暗い感じがします。たぶん、あなたは電気の明かりがほしいと思うでしょう。 普段、おとなは明るくないと不安な環境にいるせいでしょう。でも、慣れると逆に落ち着きます。

普通の家の玄関ですね。まっすぐ進むとトイレ。木の床に木の壁。白壁と布天井が暖かみをくれます。トイレも子供用でなく、家庭と同じく、そして清潔です。ここにも、花が飾られています。

ここから、大きな部屋には入りますが、この入り口には、和の季節のテーブルがあります。

この大きな部屋の天井は、薄いピンクの布が、波のように張られています。とても、穏やかで優しい気分になれます。このピンクは、母親の子宮の色だと考えています。母親の胎内にいる気分になれると信じています。

右側は、大きなカーテンに仕切られている部屋。ここは誕生会の人形劇が飾られていたり、木製の衝立・テーブル、ひも、お手玉、木片などが並んだ棚があります。その奥は、お絵かきやにじみ絵コーナー。ここでは、好きな時に子どもたちは、蜜蝋クレヨンで絵を描いています。

左手には、押し入れの戸がないような寝台車に似ている場所があります。その下のカーテン内には、木の椅子や丸太がたくさん並んでいます。ここが大型木製遊具の秘密基地になります。

季節のテーブルの奥には、通称2DKの部屋があります。中央のリビングには、草木染したシルクの布・自然の石や木の実、木片・布のおもちゃや、床のフローリングの短冊があります。短冊は線路で、木片は電車です。ここに、様々な丸太や材木が加わり、すばらしい電車ごっこが始まります。

更に奥には、ダイニングテーブルやキッチンセットやレンジや木製のお皿や食器が並ぶ棚のあるダイニング。その隣が、お人形やベッドなどが並ぶ寝室です。

一番奥には、巨大な薪ストーブがでんと腰を落ち着けています。冬の最大の功労者です。ここは、畳の敷かれた和室。厳選された絵本が並び、ここで毎朝お昼夕方と絵本を読んでもらいます。帰りの会もここで行います。

別の入り口隣部屋は、おはなし人形劇の専用部屋です。ろうそく台や人形劇の舞台が完備されています。中に足を運ぶと、ピンクの世界に包まれます。ここは、母親の胎内の世界と言われています。

建物のもう反対に、3つ目の部屋があります。ここは、3歳未満児親子が通う大地ミニの部屋です。2階建ての室内ハウスや台所、木製のおもちゃや人形が並んでいます。更に、厳選された絵本もたっぷりあります。また,秘密裏にボルダリングの壁も完備されており、放課後の子どもたちが楽しみます。

以上、大地は、この3部屋しかありません。つまり、年齢ごとの部屋なありません。必要ないのです。縦割りでやっており、皆兄弟みたいなものですから。全く、家庭と同じです。

大地の四季

春の訪れ

2月下旬、雪の下でオオイヌノフグリを子供達は見つけます。これが、大地の春の訪れです。三月になると、急激に雪が引いていき、白から黒の色面積が増していきます。

3月には、スロープの日陰に雪だまりを一部残して、緑色の絨毯が染まり始めます。樹木、リンゴの芽吹きが始まります。長靴をどろどろにしながら、軽やかな足取りが、暖かい春風の中を、響き渡ります。桜、リンゴ、桃、ミズサクラなどが美しく連続して咲いていきます。子供達は、早春の野山、田圃に出かけ、ふきのとう、ツクシ、ゼンマイ、タラの目、ふき、ワラビなどを取り、味わいます。中でも、1番人気は、のびるです。これは、おうちの人も、おみやげに期待している一品です。

5月を迎えると、日毎に、大地は緑に覆われて、薄暗くなってきます。芽吹きが進み、葉が繁り始めるからです。リンゴの花が一斉に咲きほころび、水田は、鏡のように、山々を映し出します。蛙の鳴き声が多くなり、田植えが始まり、水田が緑色に変わっていきます。子供達の手には、いつも、のびるやワラビ、お花、泥団子、木の棒などがあります。また、緑の絨毯の上で、ひたすら、花の冠や腕輪を作っていたり、木登りをしている子供もいます。スロープいっぱいに泳ぐ鯉のぼりにつかまったり、中に入ったり出来るのも大地の面白さです。

言い忘れました。この時期は、入学、進級の季節です。新入生は、初めて、親から離れるのですから、不安と不機嫌、寂しさ全てを抱えています。誰だって、家やお母さんが1番いいに決まっています。子供にしてみれば、幼稚園に行かされるなんて余計なお世話ですね。幼稚園は楽しいから行って来なさいと言われて、来たところが、靴やリュックはここですよ、トイレはこのときに済ましてね、手をつないで、歌を歌って、外はまだ出ませんよなどと教えてもらうのがこの時期。子供にしてみれば、楽しい所なはずなのに、ちょっと話しが違う、もっと、自由に興味深く動きたいはずなのです。

もちろん、大地の初日も、おかあさん・おかあさんの大合唱です。大地の最初の1週間は、園舎には入りません。近づきません。お世話係の年長さんに手をつながれて、山道をいきなり歩き出します。葉っぱやタンポポ、虫を捕まえたりして、歩きます。水田に入って、タニシを見つけたり、蛙を捕まえたり。思い思いに野山で過ごします。時間のゆっくりの流れの中で、過ごし、時間がきたらそのまま帰ります。これが1週間続きます。子供達は、幼稚園に来ているよりも、毎日、遠足、ハイキングに来ているのです。親御さんも、何してきたのと聞いても、子ども達は、ポケットから花、石、棒、蛙などを出して、笑っているそうです。

1週間後、ようやく、大地の建物に入ります。この頃になると、子供達は、すっかり大地へ来ることが楽しくてなりません。ここで、年長さん達に、下駄箱やリュックの置き場や、室内での流れを教えてもらうのです。そして、室内遊びの楽しさ、外遊びとは違う、内的な楽しみも覚えていきます。

大地の畑では、イチゴが最初に実ります。40人で食べても食べてもあまりあるほど実ります。もちろん、露地栽培の無農薬です。甘酸っぱい素朴な味です。また、庭では、山桜の実(小粒サクランボ)を、手を真っ赤にして毎日木に登って食べています。これは、女のこが多いのが特徴です。さらに、懐かしい、桑の実も大量に実ります。これも、大地の風物詩であり、名物です。ジャムにしたり、草木染めにしたり、贅沢な毎日です。

また、畑には、キュウリ、トマト、ピーマンに始まり、スイカ、メロン、ジャガイモ、サツマイモ、トウモロコシ、大豆、あらゆるものが、本格的に無農薬栽培されます。お米も、全身、泥につかりながら、そして、座りながら、田植えを楽しみます。泥遊びの後は、五右衛門風呂がまっています。

そして、緑萌える、そして、美しく鮮明に緑を映し出す梅雨がやってきます。この時期は、合羽や傘が最高の道具です。雨がふっても、合羽を着て、外へでます。雨ならではの情景、環境の変化が楽しいのです。水があふれる水路、水たまり、葉のしずく、水田に落ちる雨、そして、かたつむり、どれもが、子供達にとっては、最高の贈り物です。

こうして、大地の春は穏やかな流れの中ですぎていきます。緑が濃くなるにつれて、蝉や小鳥たちの鳴き声大きくなります。リンゴの実がだんだん大きくなります。草が萌え、茂ってくるように子供達も、どんどん大きくなります。
そして、大地も子供達も、躍動感あふれる夏を迎えるのです。

夏の躍動

セミの鳴き声が最高の季節を迎えます。子供達は安定して、足取りも軽やかです。

土の地面の雑草がたくましくはえています。固く締まった土を裸足で踏みしめて遊ぶ子供、緑の絨毯を素足で駆け下りる子供、様々です。

夏の暑さ、日差しは、大地とは無関係です。大地全体がすっぽりと樹木に覆われて、ジャングルのようになります。スロープ以外は静けさと涼しさに覆われます。スロープの上と下には大きな木が茂ります。特に、20年前に記念樹として植えられたハルニレの木は、当時、1メートル足らずだったものが、今や8メートル、太さ60センチ近くなり、その木陰では、100人以上の人たちが、その涼しさを味わえます。

周囲、特に、通称アミアミ広場は、夏の最高の遊び場です。夏になると、ほとんどの子供は、ここで遊びます。下界が30度をこえても、ここは、半袖でも寒いぐらいです。カラ松と雑木林から木漏れ日が入ってくる程度で、雑木林のざわめきと風が爽やかです。この緑の中に、子供達の声と姿が映えわたります。そして、ここでの昼食、お弁当は最高です。人間の食欲を1番促進させる環境は、雑木林だと聞いたことがあります。大きなテーブルにお弁当を広げ、揺らめく木立を眺めながら、そのざわめきを聴きながら、その風を受けながら、小鳥たちとお話ししながら、友達と並んで、母親の愛情を感じながら、いただくお弁当です。

ここから見える大地の畑は、緑が茂っています。キュウリやトマトは、ほとんど、毎日、散歩時のおやつに、つまみ食いされていきます。なすやピーマンは、大地自家製のみそと共に、かまどで 油みそ と言う名前で料理されて、おいしい一品となります。夏休み前には、ジャガイモが収穫されて、石釜でじゃがバタになったり、蒸かされたり。トウモロコシは、子供達の背丈を超えています。サツマイモは蔓を伸ばして、地面いっぱい覆っています。 スイカやメロンは、ころころ実り、子供達が1番注目しているものです。

大地にはプールはありません。必要ないのです。プールは家庭でお願いすることにして、大地でしかないことをして過ごします。水遊びしたくなったら、泥プールがあります。大人でも腰までつかる底なし沼のようなもの。ブルーシートで囲って作るプールもあります。でも、プールで涼を取らなくても、十分涼しいので、この森や林で過ごしたほうが幸せです。

この時期の森を歩く最高の楽しみは、特に男の子にとっては、クワガタ、カブトムシ取りです。なんといっても、必ずいるのですから楽しいはずです。お目当ての木や自分の場所があり、毎日駆けつけていきます。しっかり見つけるから大したものです。でも、スズメバチや蛇もいるのですが、子供達はこのあたりの危険に対する行動はしっかりしています。蛇も毒蛇以外、捕まえて、首に巻いたりして遊んでいます。セミの泣く林は、本当に日本、里山の夏です。日当たりはじりじり熱いのですが、木陰はものすごく涼しいので、最高に過ごしやすいです。

室内は、北側の雑木林からクーラー顔負けの涼しい風が吹き込み、ひんやりしています。室内は快適です。ブナの無垢のフローリングは、冷たくて、ひんやりしていて、皆、室内は裸足で過ごします。

1ヶ月ほどの夏休みがおわると、登山で2学期はスタートします。毎年行先は変わりますが、ほとんど2000メートルから2500メートル位までの本格的登山です。

この時期は、スイカ、メロン、トウモロコシが実り、連日、大地の恵みを楽しむ日が続きます。

9月に入ると、リンゴが色付き始め、最高に美しく味わい深い秋がやってきます。

秋の郷愁

大地の入り口、リンゴのトンネルでは、真っ赤にたわわに実ったリンゴが、香しい香りを漂わせて、子供達を迎えてくれます。水田は黄金の絨毯が敷き詰められ、林の緑とのコントラストがすばらしいのです。果樹が実り、イナゴが飛び交う風景は、まさに日本の里山、ふるさとの光景です。

大地の空は高く、そして、透き通り、全てのものが、熟成された実りを迎えます。

そして、トンボや虫が飛び交い、子供達は、全身で秋の想いを身体で受け止めます。

大地のかまどと石釜が1番活躍する季節です。石釜には、サツマイモ、カボチャ、栗、リンゴ、などがどんどん入り、かまどでは、新米やトウモロコシが焼かれます。

まさに、毎日大地の恵みを味わいに来ているようです。基本的に野外料理がほとんどですので、薪を山から集めてきたりする楽しみもあります。そして、煙にむせながら火を焚いたり。都会の子供達は、火は青いものだと思っている なんて言う本気か冗談かわからない話がありますが、赤々と煙りを立てて燃える火を見ることは幸せです。大人でも子供でも、赤々と燃える火を見ることは、全く退屈しないものです。

秋になっても、子供達の遊びは、11月までは、そう変化がありません。相変わらず、花や草をと戯れ、野山を駆け回り、作ったり、生み出したりする遊びがほとんどです。ただ、子供の遊び自体、とても創造的なものになっています。のこぎりなどを持って、あちこちの林で枝や材木を切って、何かを連続して作ったり、蔓でリースを作り続けたり、室内では、さきおりやリリアン編みなどで、財布やマフラーを作ったりする姿が多くなります。果実が熟すのと同じように、子供達の内面も同じような成長を見せます。

秋の森や林の散歩は最高です。この時期ほど、子供達を楽しませてくれることはありません。まず、紅葉から落葉までの変化が毎日楽しめます。森の姿が確実に変化し  ていく姿が実感出来ます。そして、その樹木がもたらしてくれる自然の恵みも。

紫色に色付くアケビ。この熟する過程、紫になり割れる姿、甘い果肉を口に入れ、種をぷっと吹き出すおもしろさ。この甘さは、本当の自然のものです。

次に、山栗。散歩道に毎日落ち続けます。もちろん、大地の子は、そのまま、食べます。歯で半分に割り、爪でシブをむきます。最後にズボンにこすると、なんときれいな黄色が現れます。それを、コリッとかんだ瞬間はたまりません。もちろん、たくさん集めて、石釜にいれての焼き栗は、最高です。

そして、なんと入っても、キノコ。紫シメジ、白シメジ、あみたけ、くりたけなどを求めて、藪や斜面をかき分けて、落ち葉の中を歩くことは素晴らしい世界です。なぜなら、静かな森に、落ち葉を踏みしめる音と子供の歓声がこだまするからです。

あちこちで、キノコ見つけたと言う声を聴くたびに、すごい宝物を発見した歓声があがります。本当に、森に感謝です。
柿やブドウもなしなども、全て大地で口にすることが出来ます。リンゴに囲まれている大地だけに、全てがリンゴで、11月下旬まで、リンゴ三昧の大地であり、保存しておくと、春まで楽しめます。

畑からは、サツマイモ、大根の恵みがあります。サツマイモは、なんといっても、石釜です。冬に薪ストーブの中にいれても最高です。米や餅米の収穫もあり、大地の秋は、そのまま、食の秋になります。

森や林が、にじみ絵のように、色つきはじめ、最高の紅葉を迎えます。子供達は、赤や黄色の葉をいつもたくさん集めます。しかも、きれいに色付いたものだけを。大地の周囲は、意識的に広葉樹が植えられており、その周囲は、自然の雑木林になっています。そのおかげで、ベランダ付近は、楓や桜の葉で埋まります。子供達は、木の葉を集めて、毎年、落ち葉のプールを楽しみます。

この頃から、冬の準備が始まります。名物は、薪運び。約、2週間続きます。皆ヘルメットを被り、梯子に乗り手渡しで2階へも上げます。薪ストーブ用に、3カ所に膨大な薪を積み上げます。この広い大地は、全部薪ストーブで暖を取り、石油ストーブは全く使いません。そのため、薪運びは一大事業です。年長児で、5キロから8キロクラスの丸太まで運んでしまいます。たくさん重いものを持つことが、ステイタスなのです。

11月中旬、リンゴの収穫を終え、リンゴ畑が寂しくなると、いよいよ、大地は、深い静けさのある冬を迎えます。

冬の静寂

11月から、大地の煙突から、白い煙が登ります。いよいよ、薪ストーブに赤い炎が燃え上がります。何ともいえない優しい柔らかい暖かさが漂います。

大地の地面は、落ち葉の絨毯がびっしり敷き詰められ、樹木は、葉を落とし、大地は、日差しが入り、明るくなります。寒くなりますが、あいかわらず、外では、活動的な遊びがつづき、ただ、あみあみ広場などの日陰な場所から、やはり、日の当たるスロープが中心となります。お弁当も、この時期になっても、スロープで食べています。

志賀高原の山並みは、もう真っ白です。11月下旬には、大地も雪がちらつき、子供達も、本格的な上着を着始めます。すっかり、樹木は葉を落とし、大地の世界はモノクロの色合いになります。地面は、この頃からどろどろに土が柔らかくなり始め、靴が泥だらけになり始めます。

この時期は、火鉢や焚き火コーナーで火を焚いたり、かまどで汁ものを作る時などは、皆、暖を求めて集まってきます。皆、リンゴのほっぺになっています。大根を収穫して、大根汁、たくわん漬け、干し柿,シミ大根など、保存食作りなども盛んに行われます。年内は、餅つきやしめ飾りなどの日本的な風物詩の行事も多くなります。

年々暖冬のせいで、年内に雪が積もることは少なくなりました。大地が開園した当時は、年内に子供達とスキーをしたり、そり遊びをしたこともあります。

新年を迎え、雪が積もると、大地の様相は一変します。白と黒の世界です。それは美しく、静寂で、一筋の白い煙。子供達の姿が際だちます。ふわふわの誰も踏み入れていない世界、雪野原が展開されます。

大地の地形のおもしろさが1番発揮されるのは、なんといってもこの季節です。スロープが、そりゲレンデに変身します。スキー場にあるファミリーゲレンデやそりゲレンデとは比べものになりません。まず、子供達は、脱出訓練から始めます。これは、スロープが急斜面のため、そり滑りでそりを止めるには、足では無理で、雪面へ脱出するしか方法はないのです。これで、友達にぶつかったり、樹木にぶつかることなど、危険から身を守ることを学びます。これがマスター出来れば、そりデビュー。何度も何度も滑ることで、汗びっしょり、体力向上、これ以上ない遊びが展開されます。友達10人ぐらいつながったり、2人乗りですべったり、スノーボードの用に、立って乗ったり、様々な遊びを考案してくれます。
また、ストープの中盤あたりには、高さ60センチ、幅2メートル位のジャンプ台も作られます。ここは、上級者用そりコースで、1.5メートルぐらい、軽く飛んでしまうのです。

大地の雪遊びは、どんな天候でも、ほとんど、午前中は外へでます。自然の厳しさ、快適さ、冷淡さ、楽しさ、全てを感じます。この雪に耐えるために、子供達は、完全防備で出かけます。ウレタン入りハイカット長靴、ワンピーススキーウェア、スパッツ付き、袖の長い手袋、毛糸の防止、この格好で、約2時間近く、遊べます。

そり滑りだけでなく、尻滑り、森のボブスレー、かまくら、等々、雪があれば幸せな遊びです。もう一つ、大地の名物は、歩くスキーです。子供達はクロカンと呼んでいますが、タイムや記録のために必死に滑るものではなく、雪の上を散歩するのにスキーを履くと容易に移動出来楽しいと言うものです。雪に埋まらなく、すいすいと移動出来、しかも、下り坂は滑るし、楽しいものです。技術は必要なく、年少児もすんなりと楽しめ、親子でも、いろんな場所や林へハイキング出来る楽しみがあります。ウサギや動物の足跡を追ったり、田んぼで鬼ごっこや宝探し、林の中の探検、スロープでのスキー滑りなど、冬の遊びには欠かせません。おまけに、アルペンスキーの基礎ができます。

室内では、薪ストーブの暖かさに包まれて、変わらない遊びが展開されています。ストーブの上では、スープが蒸気と良い匂いを部屋いっぱいに漂わせています。

薪ストーブは、人間を3回暖めます。1回目は、薪を運んだりして、汗をかいて暖まります。2回目は、その薪を焚いて、暖を採ります。3回目は、その上で、暖かい食べ物を作り、それを頂いて暖まります。このように、大地の子供達は、薪ストーブの恩恵を受けて生活しています。

雪遊びで疲れた身体を穏やかにさせるのは、やはり室内の暖かさが最高です。それだけ、遊びも穏やかで優しい雰囲気になります。綿帽子をかぶった樹木やふんわりと積もった雪を室内から見ながらの光景は最高です。雪下ろし、嵐、吹雪を体験しながら、2月下旬になると、雪の下に緑の草を見つけ、春近しを感じます。3月上旬、田圃にくろい畦が見え始め、そこにふきのとうを見つけます。

それから、白い世界に黒い部分が多くなり、だんだん逆転方向に向かい、雪がどんどん引いていきます。そうして、大地は、暖かい春を迎えます。